日本の山好きの憧れ、剱岳。
室堂から立山にもずっと行ってみたいと思っていたので、厳しい残暑の9月某日に立山・剱岳の縦走登山を敢行してきました。
行程
YAMAPのトラッキングデータは以下になります。
立山・剱岳縦走一泊二日 / magentdaさんの別山(富山県)・立山(雄山)・剱岳の活動データ | YAMAP / ヤマップ
室堂から立山を縦走、劔沢にテント泊し翌日早朝に剱岳登頂を目指す1泊2日の王道ルート。
同じルートを2泊3日で計画する人も多いようです。
登山の記録
1日目・出発:扇沢駅

長野方面から立山黒部アルペンルートを利用し室堂へ向かいます。
前日に扇沢駅に車で到着し車中泊。翌日の始発バスに乗車しました。天気予報はあまり良くはないですが、結構登山者らしき人がいます。
室堂ターミナル

始発のアルペンルートは臨時便もあり、待ち時間無く一気に日本最高所の駅、室堂ターミナルに到着。ここから登山としてトラッキングをスタートします。
室堂は上高地と同じで有名観光地でもあり、登山客と観光客が入り混じります。今回は始発で来たので流石に登山客の方が多数派のようです。

室堂ターミナル駅には水場があるので、ここまでは水を背負わずに来られます。給水をして登山開始します。

室堂から一ノ越までは石畳が結構続いており、あまり登山感がないですが勾配はきついです。テント泊装備を背負っていますが、つい身軽な観光客のペースに合わせてしまいオーバーヒート気味に。
一ノ越山荘

最初のチェックポイント、一ノ越山荘に到着。
流石にまだ体力に余裕があるのでここで休憩はせずスルーします。
しかしここですでに標高2700m。富士山の五合目と違ってあまり高所順応に関するアドバイスは目にしませんが、できれば室堂でも同じように時間をかけて身体を慣らしたほうがいいと思います。

一ノ越山荘をこえ、ガレ場を登っていくと見えてくるのが立山頂上、雄山神社の社務所。立派な山小屋のようにも見えます。
雄山山頂

立山連峰の主峰、雄山に登頂。
気温は上がってきましたがまだ体力は大丈夫。

夏は神官が常駐していて、頂上参拝は有料です。登頂し、祈祷を受ける人たちの「万歳三唱」が響き渡っていました。

続いて立山連峰「最高峰」の大汝山へ向かいます。
大汝山山頂

あっという間に大汝山山頂に到着。少しガスが視界を妨げていますが、3000mピークを縦走という贅沢が気持ちいいです。
続いて富士ノ折立へGO。

とその前に、山頂からわずかに降りたところにある大汝休憩所でコーラを補給。
管理人さんはワンオペ状態。オーダーを受けたりお餅を焼いたり忙しそうでした。
富士ノ折立

順調に進み富士ノ折立山頂に到着。
それぞれのピークの距離が近く、眺望はそれほど変わりません。贅沢な悩みですが…

時々ガスに巻かれますが、稜線がはっきり見えてテンションが上昇。
しかしここから標高を200m近く下げながら真砂岳へ向かいます。

一気に降りてきました。振り返るとガスの切れ目から歩いてきた稜線が見え、極めたピークの雄大さを実感します。
真砂岳山頂

真砂岳山頂に到着。
ここからさらに下り、大汝山から数えて300m近く標高を下げたところから登り返して別山へ。

だんだん空気が澄んできた気がします。
ガスが切れて遠くまで続く稜線が見え、登山時特有の脳汁が出てまだまだ頑張れます。
別山山頂

登り返しをクリアし別山山頂へ到着。
別山のピークは北峰もあり、わざわざ足を延ばすことになりますがせっかくなので行ってきます。
と、ここで…

にわかに雲が切れ、剱岳がその全貌を現しました。出発時には雨さえ降らなければ御の字と思っていたのであり得ぬ僥倖です。
「剱」の名にふさわしい、人々に畏れを抱かせる山容。山岳信仰から登ってはならない山とされてきたのも納得です。
剱岳を眺めるポイントはここがベストかもしれません。
別山北峰

別山北峰に到着。
本来はここで目の前に迫る剱岳が拝めそうですが、残念ながらまたガスが登ってきました。
後ろ髪をひかれながら戻り、次はさらに標高を下げながら劔御前小屋に向かいます。

今日のキャンプ地、劔沢のテント場が見えました。
天気が読みにくかったからか、空いているような気もします。
劔御前小屋

劔御前小屋に到着。
ここまでくれば劔沢までもう一息です。そしてキャンプのお楽しみにビールを1本購入…!
劔沢テント場

劔沢テント場へ到着。早速テントを設営し、受付を済ませ(1000円でした)、劔沢小屋でも見に行ってみようかと考えているとまたしても剱岳の姿が。
最高の景色と一緒に早速ビールをキメました。

ビールのお供にセブンイレブンで買っておいたチョリソー。友人と分け合い一人2本ずつ。
天気に期待していなかったのでパーティー用の食材を全然用意していませんでした。
剱岳を眺めつつクッカーで湯を沸かし、夕飯としてアルファ米にモツ煮をぶっかけて食べます。

そして今回のお楽しみ、晩酌。山専ボトルにロックアイス、マスターフラスコには北海道・ニッカウイスキー余市蒸留所限定のブレンデッドウイスキーを入れてきました。この二つがかなり荷物の重量を増やしていましたが…

劔沢の夜空はすっかり晴れ、頭上に満点の星。これを眺めながらの一杯で全て報われました。
満足したところで翌日の剱岳登頂に備え必要な装備をサブザックにパッキングし、就寝。
キャンプのひとつ大きな楽しみといえば、焚火です。 炭火でのバーベキューと違い、薪を燃やす焚火をする機会は、日常にはなかなかないと思います。だからこそ、キャンプ場では焚火が映えます。 特に夜の焚火の雰囲気は格別で、火の世話をして[…]
2日目:剱岳へ

翌日3:00、2日目の行動開始。
まずは剣山荘を目指します。
剣山荘

20分足らずで劔沢から剣山荘に到着。剣山荘からも剱岳を目指して出発する人がちらほらいます。
前劔

一服劔という小ピーク手前あたりから鎖場が始まります。
まだ暗いので足元と落石に注意しつつ進み、前劔頂上に到達。途中、富山の街の夜景が見えました。

午前5時過ぎ、段々と明るくなってきました。振り返ると前劔がモルゲンロートに燃えています。
カニのたてばい

噂に聞く難所の一つ、9番鎖場「カニのたてばい」。剱岳の鎖場のうちいくつかは登り降りでルートが分かれており、このカニのたてばいは登り用のルート。
下からみるとほぼ垂直で確かに一般登山道としてはかなり難所の部類かもしれません。人工的に設置されたボルトや鎖も利用しながら、3点支持を守って通過します。
剱岳山頂

いくつもの鎖場を経て、ついに念願の剱岳に登頂。
劔沢のテント場からおよそ3時間でした。天候に恵まれましたが、急な岩場が多いので雨の場合は撤退も含めて慎重に検討した方がいいと思います。
山頂からの眺望も良かったのでここで軽く朝食をとり、渋滞が始まる前に下山を開始します。
カニのよこばい

降りの難所、10番鎖場「カニのよこばい」。
切り立った岩を真横に巻いていく感じでフットホールドが見えにくく、とりつく前にムーブを考えておかないと厳しいです。
あるいは経験者に先行してもらい、指示をもらいながら通過した方がいいかもしれません。
またここから先、降りルートの上部を登りルートが通過している箇所があるため、落石に注意しながら進みます。
劔沢小屋

前劔・一服劔をこえ、劔沢小屋まで戻ってきました。渋滞に巻き込まれなかったので割とスムーズに進めました。

ここでも記念撮影。今朝はもう好天としか言いようがないです。
テント場に戻ってテントを撤収し、雷鳥沢方面から室堂に下山します。
雷鳥沢キャンプ場

雷鳥沢キャンプ場は見れば見るほど最高のロケーション。キャンプ場から立山を見上げることができ、ここにキャンプだけしにくるのも十分楽しいと思います。

そして雷鳥沢から登り返すこの最後の階段が…
ここだけはトレッキングポールが欲しいと思いました。
地獄谷

結構火山ガスが出ています。
階段の登りで息が上がると火山ガスが喉にきます。濡らした手拭い等で口元を抑えながらできる限り素早く通過するのがいいと思います。
みくりが池

若干雲がかかってみくりが池に映る立山は微妙でしたが、十分いい眺めでした。
ここまで戻ってくるとほぼ山行は終了、観光地の空気感です。

というわけでみくりが池温泉でソフトクリームを購入。ブルーベリーミックスにしました。
そうして観光客に混じってのんびり歩いて室堂に到着。立山黒部アルペンルートを利用して扇沢に戻ります。
帰りは臨時便がなく、乗り換えのたびに多少の待ち時間がありました。
まとめ

正直、前日までは扇沢出発前の天候次第で撤退も考えていました。蓋を開けてみればやりたいことを全部でき、総合的に優勝した山行だったと思います。
立山黒部アルペンルートの利用はそれなりに懐が痛むため、一度室堂まで来てしまったら、多少悪天候でも剱岳までの山頂アタックを強行したくなるかもしれません。しかしやはり難所は難所なので、無理せず撤退の判断をすることが大事な山域なのかなとも感じました。